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過度な期待は禁物!「同一労働同一賃金」で派遣切りはさらに増える

2019年10月9日

同一労働同一賃金が始まって、ようやく派遣社員も正社員と同じ待遇を受けられるようになった!

ずっと派遣で辛い思いをしてたけど、これからは金銭面でも安心して暮らせるようになるのが嬉しい!

 

もしあなたがそう思っているのなら、「ちょっと待った!」です。

 

たしかに、同一労働同一賃金が始まったことによって派遣社員の待遇は以前に比べて格段に良くなりました。

 

具体的には

  • 正社員がもらっている「賞与」を、これからは自分ももらえるようになる
  • 各種手当や交通費、退職金なども受け取れる
  • 正社員と同じ研修を受けられる
  • 正社員と同等の福利厚生施設を利用できる

 

これが叶ったら、わざわざ正社員になるメリットがほとんどなくなるのですから、「このままずっと派遣でもいい」とつい思ってしまいますよね。

 

ですが、これはあくまでも「派遣先企業がそのままスムーズに対応してくれれば」の話。

企業によっては誠実に対応してくれず、最悪の場合「派遣切り」となる可能性も十分あり得ます。

 

 

 

こんなことも、現実に起こってるんです。

 

私は今回の記事を書くにあたってたくさんの同一労働同一賃金に関する情報を収集しましたが、正直「本当にこれ大丈夫?」と不安な気持ちの方が圧倒的に強いです。

 

今派遣社員として働いている人は、同一労働同一賃金に過度な期待はせず、最悪の「派遣切り」という可能性も頭に入れておくのが賢明ですよ。

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過度な期待は禁物!「同一労働同一賃金」で派遣切りはさらに増える

ズバリ、先ほども言いましたが、同一労働同一賃金で派遣社員が「派遣切り」に合う人はさらに増えると予想されます。

 

その理由は、大きく分けて次の2つです。(今回は派遣先企業の視点で考えてみました)

 

理由①:色々と面倒だから(手間かかりすぎ)

理由②:賃金アップを避けたいから(派遣を雇うメリットがない)

 

理由①:色々と面倒だから(手間かかりすぎ)

今回の同一労働同一賃金によって、派遣先企業の負担は確実に増えます。

 

具体的には

派遣会社に社内の情報を提供しないといけなくなる

対応がバタバタになる

派遣法を熟知する必要がある

 

これが面倒で、企業によっては「もう派遣とるのやめよう」となる可能性も否定できないです。

 

手間その1:派遣会社に社内の情報を提供しないといけない

今回の同一労働同一賃金には、派遣社員の給料を「派遣先企業に合わせる」のと「派遣会社に合わせる」の2パターンがあります。

 

そして、これはそれぞれの派遣会社によって変わってくるので、派遣先企業はその派遣会社に合わせてそれぞれ対応しなければなりません。

パターン1:派遣先企業に合わせる「派遣先均等・均衡方式」

ポイント
  • 派遣先の正社員と仕事内容(配置転換の範囲、責任の程度、人事異動の範囲などを含む)が同じ場合、その正社員と同じ待遇になる
  • 仕事内容が違う場合は、そのバランスを考えて不合理のない待遇にする

派遣社員のメリット
・どの派遣会社から働いても時給が変わらない

派遣社員のデメリット
・派遣先が変わった時に(大手から中小など)給料がガクンと落ちる可能性がある

パターン2:派遣会社に合わせる「労使協定方式」

 

ポイント
  • 派遣会社が締結する「労使協定」の内容に沿った待遇になる

(労使協定・・・毎年厚生労働省が定める「一般労働者の賃金水準」以上になるのが前提。計算方法や参考とする統計にいくつかの選択肢がある)

派遣社員のメリット
・派遣先が変わっても給料が変わらない

派遣社員のデメリット
・同じ仕事をしていても所属する派遣会社によって時給が違ってくる
・個々のスキルが反映されにくい

 

そして派遣会社がパターン1の「派遣先均等・均衡方式」を選んだ場合は、派遣先企業は派遣会社に自分の会社の【賃金情報】などを提供しなければいけません。

 

具体的には、まず該当する派遣社員と同じ仕事をしている正社員を選定し、

その正社員の仕事内容や業務の範囲、雇用形態
なぜその人を選んだのか
その人の基本給や賞与などの細かな内容
その待遇を決定するにあたって考慮した事項

などといった細かな情報を提供します。

 

これに関しては厚生労働省がサンプル書式を出してるのですが、ざっとA4で5枚。

派遣を大量に抱えてたら、かなり面倒な作業になるのは間違いないですね。

比較対象労働者の待遇等に関する情報提供(サンプル)-厚生労働省

 

また、企業によっては「そんな細かいことを社外に教えたくない!」というところも当然出てくるでしょう。

そうなると(情報が提供されなければ)派遣の契約自体が結べなくなるので、その時点で派遣は働けなくなってしまいます。

 

ちなみに、パターン2の「労使協定方式」の場合だと自社の賃金情報を派遣会社に教える必要はないので、派遣先企業にとってはこっちの方が圧倒的楽です。

その場合でも教育訓練(研修など)や施設利用などの福利厚生についての情報は提供する義務があります。

 

現状ですが、すでに情報の提供を嫌がっている企業が多く、派遣会社の多くはパターン2の「労使協定方式」を選択しています。

 

ですが、その場合になると今度は賃金に関する別問題(後に言及)も出てきますので、派遣先にとって手放して喜べるものでもないです。

 

いずれにせよ派遣先企業にとっては何らかの情報を派遣会社に提供する義務がありますし、それによる情報の整理や見直しなどの作業も含め「面倒だな」と感じるところは多いと思いますよ。

 

手間その2:対応がドタバタになる

同一労働同一賃金は、ただでさえ2020年4月に間に合わないようなギリギリスケジュールでした。

 

~2019年12月 派遣会社の今後の対応が決まる

2020年1~3月 派遣先企業との賃金交渉

2020年4月 同一労働同一賃金スタート

 

ですが、ここにコロナが来ました。

多くの企業がコロナの対応で大忙しになり、同一労働同一賃金の対策に時間を割けられないまま4月を迎えてしまった企業も多くあります。

 

企業にとってはまず「正社員の雇用」や「企業の存続」を守ることに精いっぱいなので、同一労働同一賃金の対応はつい後回しになってしまうんでしょうね…。

 

手間その3:派遣法を熟知しておかないといけない

当然ですが、派遣先企業は今回の制度について事前にしっかり勉強しておく必要があります。

これを機に派遣会社から不利な値上げ交渉をされる可能性もゼロではないので、勉強しないわけにはいかないです。

 

ただ、正直言って今回の同一労働同一賃金、とても複雑で分かりにくいです。

特に派遣は間に「派遣会社」が挟むので、特にややこしいなと感じます。

 

もちろん、大きな企業で優秀な人事がいるのなら話は別ですが、企業によっては

「めんどくさい。」
「毎回色々変わるし、こんなんなら最初から派遣とらない方がよっぽど楽だ」

と思う会社も決して少なくないと思いますよ。

 

少なくとも私が人事だったら、やはり一度は「派遣を雇わない別の方法」を考えてしまいますね。

 

理由②:賃金アップを避けたいから(派遣を雇うメリットがない)

そして結局はこれです。

 

派遣社員を積極的に雇っている企業の中には「コスト削減のために」雇っていた企業も少なくないと思います。

ですが、正社員と同じ待遇になるのなら、わざわざ派遣社員を雇わなくてもいいんじゃないか?と考えても何らおかしくないです。

 

問題その1:派遣会社には「マージン」も上乗せしなければならない

しかも、今回同一労働同一賃金になると、派遣先企業は派遣会社に「正社員と同等の賃金+派遣会社へのマージン分」を払うことになります。

 

つまり、場合によっては自分の会社で正社員を雇うよりも派遣社員を雇う方が高くなってしまうことになるんです。

労使協定に沿った賃金にする場合でも、「今よりも高い賃金+マージン分」を払うことになる可能性大です。

 

これは、企業はどう受け止めるのでしょう?

「そこまでして派遣を雇う意味ってあるんだろうか」と考えてもおかしくなくないですか?

 

これを機に、派遣の雇用自体をやめようor縮小しようとなっても何らおかしくないですよ。

関連記事大手派遣会社の求人数/社会保険料/マージン率を改めて比較してみた【数字は正直】

 

問題その2:「3年後に時給3割アップ」も派遣切りに拍車をかける

また、派遣社員に関しては同一労働同一賃金にあわせて「3年後に3割アップ」という制度もできました。

派遣社員、3年勤務なら時給3割上げ 厚労省が指針/日本経済新聞

 

具体的には3年にいきなり上がるのではなくて、1年、2年と徐々に上がっていきます。

0年 100%
1年 116.0%
2年 126.9%
3年 131.9%
5年 133.8%
10年 163.5%
20年 204.0%

 

たとえば時給1500円なら、3年後には時給1,979円。

1日8時間20日労働だとしたら、3年働けば月収24万から31万6,640円になる計算です。

 

厳密には勤務年数ではなくて「勤務年数に伴って業務レベルが上がったら」適用される時給なので、必ずしも上がるとは限りません。

 

ですが、原則時給は上がっても下がらない方針なので(しかも毎年査定)、派遣先企業にとっては痛手となることは間違いないですよね。

たとえずっと同じ業務を行っている場合でも、その中での仕事ぶりで時給が多少上がる、といったことも起こりえます。

 

では、派遣先企業はどうするか?と言ったら、多くの企業が時給が跳ね上がる前に「派遣切り」です。

3年ルールの時もそうですが、結局派遣社員の条件が良くなる=派遣先企業が派遣を雇いにくくなるだけなので、派遣切りに拍車がかかるだけなんですよね。

 

そこまでして囲いたい派遣社員がいるのならこれを機に「直雇用」にしてくれる可能性はゼロではないですが、現実的に見てもその可能性は限りなく低いです。

関連記事【派遣社員の直接雇用】3年直前で雇い止めする会社が多数!これが合法っておかしくない?

 

同一労働同一賃金には派遣切り以外の「抜け道」も

また、同一労働同一賃金には派遣切り以外にもいくつかの「抜け道」があります。

・「全く同じ仕事ではない」と主張できる

・派遣社員の仕事を単純化させる

・正社員の手当をカットして帳尻を合わせる

 

「全く同じ仕事ではない」と主張できる

同一労働同一賃金は、たとえ正社員(Aさん)と同じ仕事をしていても

「Aさんは〇人の部下を抱えてる」
「Aさんはトラブルがあった時の対応をする役割がある」
「Aさんには転勤の可能性がある」

などといったこまかな条件で違いを示せば、同じ待遇にする必要はありません。

 

「均等法式」(同じ仕事で同じ賃金)ではなく「均衡方式」(違う仕事でバランスのとれた賃金)をとるというわけですね。

 

実際、表面上同じ仕事に見えても中身が違う、ということはよくあります。なので、正直これを言われると派遣としては納得せざるを得ないです。

 

時給は今より多少上がるかもしれませんが、「正社員とどのくらい差があるか」によっては期待するほど上がらないことも十分あり得ますね。

 

派遣社員の仕事を単純化させる

また場合によっては、これを機に派遣社員と正社員との業務の区別をつけるために派遣社員に単純な仕事を命じる企業も出てくるかもです。

 

こちらも均衡方式の対象になりますが、単純な作業に格下げ=時給アップはそこまで期待できないです。

 

正社員の手当をカットして帳尻を合わせる

そして3つ目は、派遣の給料を上げるのではなく「正社員の手当を少なくして派遣と帳尻を合わせる」です。

これは、実はすでに行っている企業もあり、多くの正社員が悲鳴を上げています。

 

これでたしかに派遣と正社員の差は縮まるかもしれませんが、これだと誰も得しませんよね。(むしろ企業が得をする)

 

ポイント

ちなみにこれらの3つは、パターン1の「派遣先均等・均衡方式」の場合に主に起こりえるので、「労使協定方式」になった場合はそれほど気にする必要はないです。

ですが、逆に言うと労使協定方式の場合は賃金がルール化されているので(派遣会社から請求された賃金で交渉になる)、値上げ幅によっては「もう派遣の雇用はやめよう」となってしまう可能性が高いです。

ちなみに、労使協定方式の賃金水準には「賞与」や「退職金」が含まれています。

仕事を区別するなどで調整できない分、派遣先企業にとっては「労使協定方式」の方が(賃金面では)痛いかもしれませんね。

 

「不合理な待遇」に関する派遣先企業への罰則規定はない

ちなみに、今回の法改正で派遣先には以下の5つが義務化されます。

  1. 教育訓練(配慮義務→義務
  2. 福利厚生施設の利用(配慮義務→義務
  3. 福利厚生②以外(努力義務→配慮義務
  4. 派遣料金に関する配慮(努力義務→配慮義務
  5. 派遣元への情報提供(努力義務→配慮義務

 

それぞれ、以前より「義務」のレベルが上がって、より法的拘束力を持つようになります。

 

拘束力

義務 > 配慮義務 > 努力義務

 

そしてこの中で今回の問題に該当するのは④になりますが、こちらは「配慮義務」です。

配慮義務は怠ると指導・助言・勧告等の対象になりますが「絶対に守らないといけないもの」ではなく、ある程度の裁量が認められます。

 

ちなみに現時点で派遣先企業が不合理な待遇をした場合、特別な「罰則」は設けられていません。

もちろん、たとえ罰則がなくても損害賠償を請求されるケースもあるので、企業の中には誠実に対応してくれるところもあるとは思います。

 

が、これといった罰則がない以上、同一労働同一賃金が始まっても企業によっては真摯に対応せず、抜け道を探す(当然派遣社員にとっては不利な条件)ところも当然出てくると思いますね。

 

現時点で派遣先企業への罰則が定められているのは、派遣会社へ情報を提供しなかったり、虚偽報告をした時です。

不合理な待遇をした場合は「派遣会社」に罰則が科せられる場合がありますが(派遣先均等・均衡方式のみ)、こちらは最終的に裁判での判断になります。

参考記事(外部記事)2020年改正派遣法に違反してしまったときの厳しい罰則

 

派遣切りが不安なら、派遣から一刻も早く脱却すべし

(image by Success Vectors by Vecteezy

今回の同一労働同一賃金はたしかにとても画期的な制度ですが、少し前の3年ルールの時のように、ふたを開ければ「派遣切り」が横行することは目に見えています。

 

正直なところ、今後派遣法が改正されるたびに派遣はどんどん需要がなくなってくるのではないか、、、と思わざるを得ません。

 

たとえ今回の同一労働同一賃金で正社員と同じ待遇になったとしても、3年経てば切られてしまうのがオチ。

「無期雇用派遣」といった制度もありますが、こちらも派遣社員にとってはあまり良い制度とは言えないですね。

関連記事派遣の無期雇用はデメリットしかないと思っているあなたへ。その考え間違っていません。

 

正直、これじゃいつまで経っても派遣社員は報われないです。

派遣社員の雇用は安定どころか「不安定」になってますし、これなら法改正なんてしない方が良かったんじゃないかとさえ思ってしまいます。

 

ですが、一度決まった法はなかなか変わりません。

「毎回派遣法が変わるたびに将来を案じる」といった状況から抜け出すとしたら、あなた自身が「派遣」を脱却するしか方法はないです。

 

ちなみに私は約10年の派遣生活の後、消えない不安に駆られて正社員に転職をしました。

派遣からの転職は大変でしたが、何とかホワイト企業に正社員として雇ってもらえました(紹介予定派遣として最初は派遣として就業)。

 

今後もさまざまな派遣法改正があるとは思いますが、現状を見る限り正直あまり期待は持てません。

そのたびに、雇用だけでなく精神面でも不安定になってしまうのは他でもなく「あなた」です。

 

年をとっても心身ともに安定して働きたいのなら、危機感を持って早めに行動するに越したことないですよ。

 

いざ派遣切りに遭った時、同情はされても誰も「手助け」はしてくれないです。

今ある不安をこれ以上大きなものにしないためにも、私は一刻も早く派遣を抜け出すことを強くおすすめします。

関連記事
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まとめ

最後に、下記の記事を紹介して閉めたいと思います。

同一労働同一賃金"なぜ人事は反対するか~前向きになれない現実的理由~/プレジデント・オンライン

この記事は2017年のものなので派遣は対象になってないですが、これを読むと人事の考えがよく分かりますよ。

 

同一労働同一賃金は一見魅力たっぷりですが、過度の期待は禁物です。

 

派遣切りの可能性も十分にあるので、これを機にあらためて「今後の自分」についてよく考えるようにしてくださいね。

 

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