不安定な派遣事情

過度な期待は禁物!「同一労働同一賃金」で派遣切りはさらに増える

2019年10月9日

2020年(令和2年)4月1日からはじまる「同一労働同一賃金」

これからは、同じ仕事をしていれば正社員と同等の待遇を受けられるとあって、期待している人も多いのではないでしょうか?

具体的には

  • 正社員がもらっている「賞与」を、これからは自分ももらえるようになる
  • 各種手当や交通費、退職金なども受け取れる
  • 正社員と同じ研修を受けられる
  • 正社員と同等の福利厚生施設を利用できる

 

これが叶ったら、正直派遣社員としては願ったりかなったり!ですよね。

わざわざ正社員になるメリットがほとんどなくなるのですから、「このままずっと派遣でもいい」と思う人もたくさん出てくるのではないかと思います。

 

雇用形態に関係なく、同じ仕事内容ならみんな同じ待遇で働けるのはまさに理想の社会。

特に、これまで派遣で理不尽な思いをしてきた人にとっては同一労働同一賃金は夢のような制度ですよね。

 

ですが、これはあくまでも「派遣先企業がそのままスムーズに対応してくれれば」の話。

企業によっては誠実に対応してくれず、最悪の場合「派遣切り」となる可能性も十分あり得ます。

来年4月の法改正により同一労働同一賃金が導入され、派遣社員も正社員と同じ時給になる(派遣会社への手数料は別)。友人の会社では来年から派遣社員の利用を控えるらしい。追随する会社は多そうで、派遣業会社へ及ぼす影響も大きい。今後はより安価なシルバー人材や、海外の人材が重用されるだろう。

 

https://twitter.com/usg113bkw/status/1198983803869360128

 

派遣業界に属している者です。
来年の派遣法改正で同一労働同一賃金がはじまります。派遣社員に対して退職金をつける(時給の6%分、時給アップ)それを企業に交渉してますが、ほとんどの会社は派遣料金上がるなら派遣使わないと言ってきます。

派遣は都合のよい労働力と見なされてしまってる…

 

こんなことも、現実に起こってるんです。

私は今回の記事を書くにあたってたくさんの同一労働同一賃金に関する情報を収集しましたが、正直「本当にこれ大丈夫?」と不安な気持ちの方が圧倒的に強いです。

 

今派遣社員として働いている人は、同一労働同一賃金に過度な期待はせず、最悪の「派遣切り」という可能性も頭に入れておくのが賢明ですよ。

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過度な期待は禁物!「同一労働同一賃金」で派遣切りはさらに増える

ズバリ、先ほども言いましたが、同一労働同一賃金で派遣社員が「派遣切り」に合う人はさらに増えると予想されます。

その理由は、大きく分けて次の2つです。(今回は派遣先企業の視点で考えてみました)

 

理由①:色々と面倒だから(手間かかりすぎ)

理由②:賃金アップを避けたいから(派遣を雇うメリットがない)

 

理由①:色々と面倒だから(手間かかりすぎ)

今回の同一労働同一賃金によって、派遣先企業の負担は確実に増えます。

具体的には

派遣会社に社内の情報を提供しないといけなくなる

対応がバタバタになる

派遣法を熟知する必要がある

これが面倒で、企業によっては「もう派遣とるのやめよう」となる可能性も否定できないです。

 

手間その1:派遣会社に社内の情報を提供しないといけない

今回の同一労働同一賃金には、派遣社員の給料を「派遣先企業に合わせる」のと「派遣会社に合わせる」の2パターンがあります。

そして、これはそれぞれの派遣会社によって変わってくるので、派遣先企業はその派遣会社に合わせてそれぞれ対応しなければなりません。

パターン1:派遣先企業に合わせる「派遣先均等・均衡方式」

ポイント
  • 派遣先の正社員と仕事内容(配置転換の範囲、責任の程度、人事異動の範囲などを含む)が同じ場合、その正社員と同じ待遇になる
  • 仕事内容が違う場合は、そのバランスを考えて不合理のない待遇にする

派遣社員のメリット
・どの派遣会社から働いても時給が変わらない(不公平を感じずに働ける)

派遣社員のデメリット
・派遣先が変わった時に(たとえば大手から中小など)給料がガクンと落ちる可能性がある

パターン2:派遣会社に合わせる「労使協定方式」

 

ポイント
  • 派遣会社が締結する「労使協定」の内容に沿った待遇になる

(労使協定・・・毎年厚生労働省が定める「一般労働者の賃金水準」以上になるのが前提。計算方法や参考とする統計にいくつかの選択肢がある)

派遣社員のメリット
・派遣先が変わっても給料が変わらない(賃金の安定)

派遣社員のデメリット
・同じ仕事をしていても所属する派遣会社によって時給が違ってくる(同じ仕事なのに…と不公平を感じることも)
・個々のスキルが反映されにくいため、「派遣先均等・均衡方式」より時給が安くなる場合がある

 

そして派遣会社がパターン1の「派遣先均等・均衡方式」を選んだ場合は、派遣先企業は派遣会社に自分の会社の【賃金情報】などを提供しなければいけません。

 

具体的には、まず該当する派遣社員と同じ仕事をしている正社員を選定し、

その正社員の仕事内容や業務の範囲、雇用形態
なぜその人を選んだのか
その人の基本給や賞与などの細かな内容
その待遇を決定するにあたって考慮した事項

などといった細かな情報を提供します。

 

これに関しては厚生労働省がサンプル書式を出してるのですが、ざっとA4で5枚。

派遣を大量に抱えてたら、かなり面倒な作業になるのは間違いないですね。

比較対象労働者の待遇等に関する情報提供(サンプル)-厚生労働省

 

また、企業によっては「そんな細かいことを社外に教えたくない!」というところも当然出てくるでしょう。

そうなると(情報が提供されなければ)派遣の契約自体が結べなくなるので、その時点で派遣は働けなくなってしまいます。

 

ちなみに、パターン2の「派遣会社に合わせる」の場合だと自社の賃金情報を教える必要はないので、派遣先企業にとってはこっちの方が圧倒的楽です。

ですが、その場合でも教育訓練(研修など)や施設利用などの福利厚生については派遣会社に情報を提供する義務があります。

 

今のところ大手の派遣会社の多くはパターン2の「派遣会社に合わせるになるだろう」と言われてますが、まだ各社具体的な対応は公になっていないです。

労使協定だとしても定める事項がたくさんあるので、労使協定を避けたい派遣会社はパターン1の「派遣先に合わせる」を選ぶでしょうし、派遣会社によっては職種によって方式を分ける可能性もあります。

 

いずれにせよ、派遣先企業は何らかの情報を提供する義務がありますので、情報の整理や見直しなどの作業も含め「面倒だな」と感じるところは多いと思いますよ。

 

手間その2:対応がドタバタになる

先ほども言いましたが、2020年4月にスタートするにもかかわらず、現時点で具体的な対応が明確になっている派遣会社はまだまだ少ないです。

中には「年内には固まるだろう」といったところもあるので、派遣先企業がドタバタになるのは必至です。

 

~2019年12月 派遣会社の対応が決まる

2020年1~3月 派遣先企業との賃金交渉

2020年4月 同一労働同一賃金スタート

おそらくですが、こんな感じになるのではないかと思います。

 

なお、上記は「派遣会社に合わせる場合」ですが、もし「派遣先に合わせる」を選んだ場合は、その前に

  1. 派遣先企業から派遣会社に賃金の情報提供をする
  2. 派遣会社ですり合わせ

といった工程があるので、もっと時間がかかります。

 

賃金交渉もスムーズにはいかないでしょうし、これらを「雇っている派遣社員すべて」に対して行うので、正直めちゃくちゃハードではないでしょうか。

企業によっては、シンプルな説明ができるようこれまでの正社員の賃金制度や評価制度を見直さないといけないところも出てくるかもしれません。

 

手間その3:派遣法を熟知しておかないといけない

当然ですが、派遣先企業は今回の制度について事前にしっかり勉強しておく必要があります。

これを機に派遣会社から不利な値上げ交渉をされる可能性もゼロではないので、勉強しないわけにはいかないですよね。

 

ただ、正直言って今回の同一労働同一賃金、とても複雑で分かりにくいです。

特に派遣は間に「派遣会社」が挟むので、特にややこしいなと感じます。

 

もちろん、大きな企業で優秀な人事がいるのなら話は別ですが、企業によっては

「めんどくさい。」
「毎回色々変わるし、こんなんなら最初から派遣とらない方がよっぽど楽だ」

と思う会社も決して少なくないと思いますよ。

少なくとも私が人事だったら、やはり一度は「派遣を雇わない別の方法」を考えてしまいますね。

 

理由②:賃金アップを避けたいから(派遣を雇うメリットがない)

そして結局はこれです。

派遣社員を積極的に雇っている企業の中には「コスト削減のために」雇っていた企業も少なくないと思います。

ですが、正社員と同じ待遇になるのなら、わざわざ派遣社員を雇わなくてもいいんじゃないか?と考えても何らおかしくないです。

 

問題その1:派遣会社には「マージン」も上乗せしなければならない

しかも、今回同一労働同一賃金になると、派遣先企業は派遣会社に「正社員と同等の賃金+派遣会社へのマージン分」を払うことになります。

 

つまり、場合によっては自分の会社で正社員を雇うよりも派遣社員を雇う方が高くなってしまうことになるんです。

労使協定に沿った賃金にする場合でも、「今よりも高い賃金+マージン分」を払うことになる可能性大です。

 

これは、企業はどう受け止めるのでしょう?

「そこまでして派遣を雇う意味ってあるんだろうか」と考えてもおかしくなくないですか?

これを機に、派遣の雇用自体をやめようor縮小しようとなっても何らおかしくないですよ。

関連記事大手派遣会社の求人数/社会保険料/マージン率を改めて比較してみた【数字は正直】

 

問題その2:「3年後に時給3割アップ」も派遣切りに拍車をかける

また、派遣社員に関しては同一労働同一賃金にあわせて「3年後に3割アップ」という制度もできました。

派遣社員、3年勤務なら時給3割上げ 厚労省が指針/日本経済新聞

 

具体的には3年にいきなり上がるのではなくて、1年、2年と徐々に上がっていきます。

0年 100%
1年 116.0%
2年 126.9%
3年 131.9%
5年 133.8%
10年 163.5%
20年 204.0%

 

たとえば時給1500円なら、3年後には時給1,979円。

1日8時間20日労働だとしたら、3年働けば月収24万から31万6,640円になる計算です。

 

正直、正社員でも3年でここまで給料上がりませんよね??

派遣社員にとってはすごく良い条件ですが、これ自体同一労働同一賃金と矛盾しているし、おそらく派遣先企業も納得できない金額だと思いますよ。

 

ですが、法律なので従わなくてはならず、、、さてどうするかといったら、時給が跳ね上がる前に「派遣切り」です。

 

3年ルールの時もそうですが、結局派遣社員の条件が良くなる=派遣先企業が派遣を雇いにくくなるだけなので、派遣切りに拍車がかかるだけなんですよね。

そこまでして囲いたい派遣社員がいるのならこれを機に「直雇用」にしてくれる可能性はゼロではないですが、現実的に見てもその可能性は限りなく低いです。

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同一労働同一賃金には派遣切り以外の「抜け道」も

また、同一労働同一賃金には派遣切り以外にもいくつかの「抜け道」があります。

・「全く同じ仕事ではない」と主張できる

・派遣社員の仕事を単純化させる

 

「全く同じ仕事ではない」と主張できる

同一労働同一賃金は、たとえ正社員(Aさん)と同じ仕事をしていても

「Aさんは〇人の部下を抱えてる」
「Aさんはトラブルがあった時の対応をする役割がある」
「Aさんには転勤の可能性がある」

などといったこまかな条件で違いを示せば、同じ待遇にする必要はありません。

「均等法式」(同じ仕事で同じ賃金)ではなく「均衡方式」(違う仕事でバランスのとれた賃金)をとるというわけですね。

 

実際、表面上同じ仕事に見えても中身が違う、ということはよくあります。なので、正直これを言われると派遣としては納得せざるを得ないです。

時給は今より多少上がるかもしれませんが、「正社員とどのくらい差があるか」によっては期待するほど上がらないことも十分あり得ますね。

 

派遣社員の仕事を単純化させる

また場合によっては、これを機に派遣社員と正社員との業務の区別をつけるために派遣社員に単純な仕事を命じる企業も出てくるかもです。

こちらも均衡方式の対象になりますが、単純な作業に格下げ=時給アップはそこまで期待できないです。

 

ちなみにこれらの2つは、パターン1の「派遣先均等・均衡方式」の場合に特に起こりえますが、たとえパターン2の「派遣会社に合わせる」になったとしても、時給計算に少なからず影響は及ぶのは間違いないです。

 

同一労働同一賃金には「罰則」がない

そして残念ながら、同一労働同一賃金をたとえ破ったとしても「罰則」はありません。

あくまでも「努力義務」。ルールを違反すると労働局から指導を受けることになるそうですが、それだけなんですよね。

 

もちろん、派遣社員は待遇が不合理だと感じたらその理由を聞く権利はありますし、派遣会社も説明する義務があります。

そしてたとえその説明に納得できなかったとしたら、損害賠償を請求することもできます。

 

ですが、実際のところ、そこまで強く出れますか?

少なくとも私は無理です。

派遣会社に意見は当然言いますが、改善されなければ「こんな会社、次の更新で辞めよう」と泣き寝入りして終わりだと思います。

単純に、損害賠償を請求するまでの勇気がないです。このような人って(特に女性は)意外と多いのではないでしょうか。

 

今までのように能力に応じての時給アップも難しくなるでしょうし、状況としては厳しいですしね。

 

厳しい罰則がない以上、同一労働同一賃金が始まっても企業によっては真摯に対応せず、抜け道を探す(当然派遣社員にとっては不利な条件)ところも当然出てくると思いますよ。

 

派遣切りが不安なら、派遣から一刻も早く脱却すべし

(image by Success Vectors by Vecteezy

今回の同一労働同一賃金はたしかにとても画期的な制度ですが、少し前の3年ルールの時のように、ふたを開ければ「派遣切り」が横行することは目に見えています。

正直なところ、今後どんどん派遣法が改正されるたびに派遣はどんどん需要がなくなってくるのではないか、、、と思っています。

 

たとえ今回の同一労働同一賃金で正社員と同じ待遇になったとしても、3年経てば切られてしまうのがオチ。

直接雇用や無期雇用の制度がありますが、どちらも派遣社員にとってはあまり良い制度とは言えないですね。

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正直、これじゃいつまで経っても派遣社員は報われないです。

派遣社員の雇用は安定どころか「不安定」になってますし、これなら法改正なんてしない方が良かったんじゃないかとさえ思ってしまいます。

 

ですが、一度決まった法はなかなか変わりません。

「毎回派遣法が変わるたびに将来を案じる」といった状況から抜け出すとしたら、あなた自身が「派遣」を脱却するしかないんです。

今少しでも将来を不安に思っているのなら、今から少しずつでも正社員に向けて動いた方が得策ですよ。

 

ちなみに私は約10年の派遣生活の後、消えない不安に駆られて正社員に転職をしました。

派遣からの転職は大変でしたが、何とかホワイト企業に正社員として雇ってもらえました(紹介予定派遣として最初は派遣として就業)。

 

今後もさまざまな派遣法改正があるとは思いますが、現状を見る限り正直あまり期待は持てません。

そのたびに、雇用だけでなく精神面でも不安定になってしまうのは他でもなく「あなた」です。

 

年をとっても心身ともに安定して働きたいのなら、危機感を持って早めに行動するに越したことないですよ。

いざ派遣切りに遭った時、同情はされても誰も「手助け」はしてくれないですからね…。

参考派遣から正社員へ!30代のあなたが考えるべき「3つの選択肢」

 

まとめ

最後に、下記の記事を紹介して閉めたいと思います。

同一労働同一賃金"なぜ人事は反対するか~前向きになれない現実的理由~/プレジデント・オンライン

この記事は2017年のものなので派遣は対象になってないですが、これを読むと人事の考えがよく分かりますよ。

 

同一労働同一賃金は一見魅力たっぷりですが、過度の期待は禁物です。

派遣切りの可能性も十分にあるので、これを機にあらためて「今後の自分」についてよく考えるようにしましょう。

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